2024年 わかやま寅さん会特別企画![]() |
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「先行き不透明で停滞した気分のこの国」に生きる私たち。わかやま寅さん会はこのことを今回振り返ることにしました。その先は、戦後日本の重要な転換点となった1970年、高度経済成長を象徴する年です。「エネルギー革命」により石炭から石油に切り替わり、炭鉱は斜陽化、産業構造が、農業政策が転換してゆく1970年の日本列島。そこにキャメラを向け、生活を見つめた映画が『家族』。この映画を広い会場で上映することにしました。高度経済成長期を経験した、或いは学んだ私たちが、何を振り返るのか。上映後の対談は山田洋次監督と主人公風見民子役の倍賞千恵子さん、案内役は俳優の北山雅康さん、そして地元和歌山市出身の照明技師土山正人さんが登壇しました。対談後は「倍賞千恵子with小六禮次郎」コンサート。今回の「特別企画」は、6時間に及びました。 ―倍賞千恵子さんからのメッセージ― 今回は、私の一番好きな山田さんの作品『家族』が上映され、コンサートも、と云う大役、とてもうれしくおもっています。頑張ります。 皆さんも、どうぞ今日のこの時間を…お楽しみいただけら嬉しいです。 ―山田洋次監督からのメッセージ― 今回皆さんがご覧になる映画『家族』は1970年、今から50数年前の映画です。大阪の千里山万博の会場でもロケをしましたが、あの時代の日本人がなにを考え、どんな暮らしをしていたのかが映っていると思います。今の日本人の暮らしのあり方、政治のあり方を踏まえ、この映画をご覧頂けたらと思います。 ―北山雅康さんからのメッセージ― 2022年から毎年ここ和歌山へ呼んで頂き、本当にありがとうございます!今年も山田監督や倍賞さんのすてきなお話を皆様に沢山聞いて頂けるよう、MC北山☆頑張ります!お会い出来る日を今から愉しみにしております。 ―小六禮次郎さんプロフィール― 作曲家・ピアニスト。映画・TV等多方面にわたって活躍。倍賞千恵子と共演するコンサートを全国で公演し好評を得ている。 ―土山正人さんプロフィール― 和歌山市出身で照明技師。代表作は「釣りバカシリーズ」、「愛を積む人」、「男はつらいよ お帰り寅さん」、「キネマの神様」、「こんにちは母さん」ほか、TVドラマでも活躍中。 |
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![]() 〈 上映後の対談をする左から北山さん、倍賞さん、山田監督、土山さん 〉 |
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―上映後の対談から― 監督は「自分の映画を映画館で観る機会はあまりなく、和歌山の皆さんと一緒にこの映画を観られてうれしい、日本人がまだ元気だった頃の話」と語り、倍賞さんは、特訓を受けた長崎弁は「今でも言える大好きなせりふ」を回想。「春になればいろんな花がいっぺんに咲いて、牛も草をモリモリ食べて、何もかもよくなる」と夫を励ますセリフを話すと、監督は「実は僕が考えたのではなく、北海道の酪農家のご夫婦から聞かせてもらった言葉だった。まったくの赤字でどうしょうもない、やめるしかないと思っているうちに春が来て牛も草をおいしく食べて、その頃になるとなんか希望がわいてくる。数字は絶望的なのに説明できない希望がわいてくる。そんな話をしてくれたのが印象的で、セリフにしました」と。また、大阪万博開催中での撮影の苦心話などを振り返った。 ―寄せられた感想文から― * 映画を観て 「『家族』は1970年の日本、高度経済成長期の当時を知るのに大変貴重な資料でもあるなと感じました風見家の長崎から北海道までの遠い道のりは困難の連続です。自分も家族と一緒に旅をしているようで一時も目が離せませんでした」 「1970年万博、まさに来年の大阪万博とリンクする。…歴史的にも保存すべき映画です」 「何かと便利になった社会ですが、「これでいいのか」と立ち止まって考えるべきことが山積しています」 「経済重視の政策が社会全体を変えてしまった。それが今の日本。これからを考える機会にもなりました」 *ゲストについて 「山田監督と倍賞さんの一切年齢を感じさせないお元気なお姿を拝見し、自分ももっと頑張ろうと身のひきしまる思いがしました」 「三平ちゃんこと北山さん、和歌山市出身の照明土山さん、豪華なゲストの皆様と同じ会場にいられたこと、とてもしあわせでした。」 「山田監督、倍賞さん、北山さん、土山さんの対談、一語一語に耳を傾けて聞かせいただきました」 |
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午前は俳優倍賞千恵子さん、午後は歌手倍賞千恵子さん・小六禮次郎さんのコンサート。まさに来場者の魂を揺さぶる記憶に残る舞台になりました。 *感想文から 「コンサートのフィナーレ、万雷の拍手とブラボー…それまでの抑制された感情がここに至って我慢し切れなくなり、爆発力が増したのだと思います。年配の男性、若い女性‥‥。ボリュームマックスの「ブラボー」でした。ポールマッカートニーはじめ、いろんなコンサートで熱狂的な反応に出会いましたが今回はそれよりも深かった。歌声、歌唱力、舞台演出、楽曲の構成から来る芸術的な感動に、倍賞さんの人間力が加わり、背筋が伸びるような感動(たとえば、「よし、自分も生きよう」といった覚悟)をいただいたからではないかと思います」 「当日は帰宅してからも興奮さめず、映画・トーク・コンサートの余韻に浸っておりました。倍賞さんの強くやさしく伸びやかで美しい歌声を生で聴けること、なんと贅沢なことだったか。歌声だけでなく朗読や貴重なお写真、出演された映画のシーンも盛り込まれ見所満載のコンサートでした。」 「倍賞さんと小六さんのコンビネーションがとても素敵でした」 高校生の参加・協力について わかやま寅さん会は、いつも高校生の参加・協力を大切にしています。司会進行は昨年に続き県立星林高校放送専門部の皆さん。そして今回は、会場内の案内・誘導に県立和歌山商業高校、県立和歌山工業高校、兵庫県立芦屋高校卒業生の皆さんの協力を頂きました。 *感想文から 「高校生の皆さんが司会やスタッフとして活躍されているのは頼もしいです」 「運営を支えている高校生の皆さん、まだまだ日本の若者に期待して大丈夫と感じました」 「特別企画、盛りだくさんの内容で楽しませてもらいましたが、それ以上に感動したのが高齢者の観客のために、多くの高校生がボランティアで参加していたことでした」 「高校生諸君の参加は出色でしたね。(フットライトがないため、トイレへの誘導は大ヒットでした)」 |
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2021年7月5日 第2回 和歌山特別先行上映会 【上映作品】 松竹映画100周年記念作品 映画 『キネマの神様』 【会 場】 ジストシネマ和歌山 一回目 : 開場13:20 上映14:00~ 上映後舞台挨拶 山田洋次監督 土山正人(照明担当) 〈入 れ 替 え〉 二回目 : 開場16:40 上映:17:45 上映前舞台挨拶 山田洋次監督 土山正人(照明担当) 〈ちんどん通信社による来場者歓迎のちんどんパフオーマンス〉 【主 催】 わかやま寅さん会 【協 力】 松竹 ジストシネマ和歌山 麦の郷印刷 (株)山ノ木 太田書店 「本」屋プラグ 広告協賛店舗数102 - 監督メッセージ - 和歌山の映画を愛する皆さんへ ぼくの最新作『キネマの神様』を、お届けします。コロナのせいで映画の観客が減少する、というようなことがあっては困ります。皆さん、日本の映画を応援してください。 7月 山田洋次 今回はコロナ禍が収束しない中での開催となりました。当初4月の上映会になっていましたが、7月に延期となったものです。この間、感染状況を逐次みながら、同時に関係機関のアドバイスを求めての開催準備となりました。劇場での感染例は今まで無い、との情報を受けながらも、当初は座席数を半分で開催する事もやむなしと思われましたが、7月に近づくにつれ和歌山での感染者数は減少に向かい、当日は最前列を空席にする事で開催することができました。もちろん、来場者にはあらかじめ感染対策の徹底を求めた事は当然のことです。 - 後日届いた感想文から - ・「素晴らしい上映会を企画・実現していただき有難うございました…コロナ禍において、製作・撮影等で大変ご苦労されたことも伺えました。元々この上映会も4月に予定されていたとのこと、開催できるかどうかもわからない中で準備を進め、そして無事実現させたわかやま寅さん会の皆さんへお礼を言いたいです。広いスクリーン会場を埋めつくす人・人・人・「こんな満席の映画館久しぶり」と隣の席の会話がきこえてきました。座席いっぱいの観客と一緒に笑って、泣いて…を共有できるのはやっぱりいいなあ。最高の娯楽、最高のぜいたくだと感じました本当に、本当に楽しい2時間でした」。「期待以上の作品をいっぱいの観客の中でみる久しぶりの感動でした」 ・「カットとカットの間に神様が宿る」は黒澤監督言葉だったのですね。東京は緊急事態再発令そしてオリンピック開幕、うまく表現できないフアン・不満の中ですが、最強の心のワクチン『キネマの神様』」でした。・「ゴウが志村けんさんだったら、どんなだったろうと、時々考えながら観てしまいました」 ・「主人公の挫折感、長女の雇止め、孫のひきこもり、妻の人生の選択 に加え、最賃、労働組合、社会情勢を、さりげなく映し、物語は進みました。社会の規格にはまらない主人公を孫は認め、社会にも認められていきます。家族のありようを考えさせられました」。・「拝啓 キネマの神様…昨年はじめクランクインの報を聞き、映画愛に溢れたあなたを広島が誇る街中(なか)の八丁座で観るのを楽しみにしていましたのですが…コロナ禍、そして志村けんさんの訃報に大きなショックを受けました。私自身も職場が閉鎖になり、慣れない仕事と和歌山への転勤となったのは昨年の夏でした。広島にいた時は、沢山映画を観ていましたが・・ですが、和歌山には映画の神様がいました。SNSで見つけた、あなたの特別先行上映会の呟きに飛びつきました。わかやま寅さん会には感謝しかありません」。・「あの山田監督が和歌山に来て下さる!すごい!!と、改めて、わかやま寅さん会の熱意が伝わり、感激しました。…山田監督も土山さんも、とても素敵で夢のようなひとときでした。こんな機会を与えてくださって感謝です」 ・「山田監督、土山さんにもお会い出来、演技派の方たちの演技を見させて頂きありがとうございました。これを機に映画館に足をはこびたいと思っています」 ・「土山さんの照明ですが、光をあてているという感じはなく、自然な感じで効果をあげているのだと思いました」 ・「山田監督の視覚障害の方とのやりとりでは、まだまだ学ばれようとする姿勢に心打たれました」 |
2019年11月23日 第1回 和歌山特別先行上映会 【上映作品】 映画 『男はつらいよ お帰り寅さん』 【会 場】 ジストシネマ和歌山 (和歌山市松江1469-1ガーデンパーク) 一回目 : 開場 9:00 上映9:40~ 上映後 舞台挨拶 山田洋次監督 土山正人(照明担当) 〈 入 れ 替 え〉 二回目 : 開場12:20 上映14:30~ 上映前 舞台挨拶 山田洋次監督 土山正人(照明担当) 〈ちんどん通信社による来場者歓迎のちんどんパフオーマンス〉 【主 催 】 わかやま寅さん会・有志 【協 力 】 松竹 ジストシネマ和歌山 麦の郷印刷 (株)山ノ木 太田書店 「本」屋プラグ 広告協賛店舗数 52 上映会のためのパンフレット(上はその表紙)には監督のメッセージとともに、地元の事業所の広告を掲載、宣伝しました。監督からは「50年かけて1本の長い映画をつくりあげた。そんな気持ちと驚きでいます。先行き不透明で重く停滞した気分のこの国に生きる僕たちは、もう一度あの寅さんに合いたい…寅さんの台詞にもあるように「生まれてきてよかったと思うことがそのうちあるさ」」と切実に願って第50作を作りました」と寄せられました。 - 舞台挨拶 - 山田監督と照明担当の土山正人さん(和歌山市出身)が登壇。監督は「機械化で人のふれ合いの少なくなった現代社会はわれわれが本当に求めていたものだったのか」と投げかけ、また「劇中の回想シーンで、若い頃を役者本人が演じている作品は珍しい。そこが私の自慢です」とも。第37作から制作に参加している照明の土山さんは「監督の目指す絵のじゃまをしてはいけないとの思いで仕事をしている」と。さらに監督は高校生(県内外から70名が参加)とも熱心に意見を交わした。地元の商店街を盛り上げようと取り組む工業高生が、「映画の商店街は人と人とのつながりがある。そんなふうに和歌山を盛り上げることができれば」と発言。別の生徒は「僕も寅さんのようになりたいです」と話すと、監督は「それはまずいんじゃないの?」と応じる場面もあり会場は沸いた。そして、「騒動を起こし周囲を困らせる寅さんを、なぜ周囲が許し観客は愛するのか、そこが問題だよね」と問いかけ、「風変りなおじさん」を大目にみることができる寛容さが、社会には大切だと思う。君たちも寅さんに近い存在を見つけ、多様性のある価値観にふれてほしい」とメッセージを贈った。「寅さん」を初めて観た生徒たちから届いた感想文には、「あんなおじさんが近くにいてほしい」と寄せたものが多数あった。なお、この企画に応えて参上の、ちんどん通信社(大阪)のパフオーマンスにより会場は大いに盛り上がり、優しい時間につつまれた一日となった。 |